*「紛争の被害者を平和構築の担い手に」JCCPはアフリカ・中東の平和構築を支援する認定NPO法人です。

■「報告:世界で一番新しい国での草の根支援 ~南スーダンでの人材育成の試み~」
   &「今後の南スーダン支援の方向性を考えるパネルディスカッション」

《《 パネルディスカッション 》》     

■日時 2014年1月29日(水) 午後7時00分〜午後8時30分
■場所 JICA地球ひろば 2Fセミナールーム

*報告会のレポートならびに皆様からお寄せいただいたご質問への回答は、以下のページをご覧下さい。

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【パネリスト】

・中嶋 秀昭 (JCCP在南スーダン代表)
・浦上 法久2等陸佐 (防衛省陸上自衛隊研究本部所属)
・石原 聡美 (JCCP在南スーダン代表事務所プログラムマネージャー)

【ファシリテーター】
・石井 由希子 (JCCP事務局長)


(石井)
それではこれからパネルディスカッションを始めたいと思います。まず、コメンテーターの方々から、中嶋の活動報告に対してそれぞれコメントをいただきたいとおもいます。

(浦上氏) 
私は、南スーダンの平和維持活動(PKO)UNMISSにおいて、自衛隊の一員として昨年一年間、南スーダンのジュバに派遣され、現地支援調整所にて勤務していました。南スーダンは現在インフラが非常に不足しており、自衛隊は主にインフラの整備を行っていますが、その中で、国際機関や人道支援組織などのニーズを聞き取り、それをPKO日本隊の活動に結びつけていくのが私の任務でした。

そうした中、JCCPとはこれまで現地でNGOとPKOの活動などについていろいろと意見交換を行っていました。ただ当初は自衛隊活動と職業訓練は結びついてはいませんでした。その後何度かJCCPの活動現場を見ることができ、PKOとしての協力が検討され始めたのです。というのもジュバには日本食を出す料理店はありませんが、邦人の数は増加していますし、日本料理は外国人にとっても人気が高まっていたからです。そこで現地自衛隊が日本料理の調理師訓練を行えば、現地の雇用創出につながるのでは、という考えに至ったのです。

浦上氏寄り2014-01-01 01.11.06.jpg国連側も人材育成の重要性については、十分に理解しています。今回それはPKOとNGOの連携の中においても可能であることを示しました。加えて日本隊施設の中で訓練生を受け入れて調理を訓練したという、PKOにとってはNGOと連携した初めての案件となったのです。連携活動の内容としては、現地のJCCP職業訓練生計5名を受け入れ、日本隊の施設内にて調理実習や衛生教育をおこないました。これは同時に自衛隊にとっても、現地の人たちと直接触れ合える大変良い機会となりました。

さて、私たち国連PKOとNGOの連携の意義について、私からも一言申し上げておきたいと思います。端的に言えば、新しい国造りへの貢献は、インフラなどの整備、国の行政組織の整備、そしてそれらを運用する人材の育成という、主にこの3点にまとめられるのではないかと考えます。これらを通じて国の持続的発展を支援していくという目的については、PKOもNGOも方向性は同じだろうと思っています。ただ、多種多様な組織や団体が支援活動を行えば、そこには必ず重複やずれが生じてきます。この支援ギャップは、それぞれの団体がお互いの活動を理解しながら埋めていく必要があります。そして今回の連携案件は、この支援ギャップを埋める作業はPKOとNGOの間でも可能であること、そして人材育成を目的としても、PKOのアセットを使ってNGOと連携することが可能であることを示したという点で大きな意義をもっていると考えています。もちろん民軍連携は国連のガイドラインに従っていなければなりません。JCCPとの案件はこのガイドラインにも合致しておりましたし、何より、現地の利益につながるものと判断したのです。

私のコメントは以上ですが、ここで2点ほど中嶋氏に質問しようと思います。

ひとつは、JCCPは、職業訓練事業とあわせてストリートチルドレンへの啓発活動も行っています。親や行政から保護を受けられないストリートチルドレンへの啓発活動は大変重要で意義があるものと思いますが、たとえばそれをもう少し発展させ、ストリートチルドレンの保護収容施設などをつくり運営するのは有効なのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

もう一つの質問は、人道支援組織は、「クイックインパクトプロジェクト」と呼ばれる国連の財政補助制度を利用することができますが、この制度を活用してはいかがでしょうか。

(石井)
ありがとうございました。JCCPと南スーダン自衛隊の、協力に至ったプロセスを大変興味深く聞かせていただきました。またその意義について、そしてNGOとPKOの連携のなかでの人材育成の新しい可能性についてもお話しいただきました。そして2点質問をいただきましたが、中嶋に回答してもらう前に、石原のほうからも一言コメントをもらいたいと思います。

(石原)
石原さん寄り.pngご質問については中嶋のほうから回答してもらうことにして、私のほうからは自衛隊での研修生の「その後」について補足でご紹介したいと思います。今まで自衛隊には訓練生を2回受け入れていただきましたが、初回の3名の研修生の「その後」として、全員就職を果たしております。ただし、日本食の調理の仕事ではなく、ウェイター・ウェイトレスとしてでした。これは、実は自衛隊で研修したことで、規律を身につけたことが評価されたためです。南スーダン人は元来外国人に対して非常にシャイなところがあるのですが、1か月間日本人に囲まれて過ごしたおかげで、外国人に対してとてもにこやかに接するようになりまして、それが高く評価されたようです。またそのうちの1名はその後ホテルのレセプションに昇進しています。その後の期の2名は、現在南スーダンで情勢が悪化しているため、まだ就職活動中ですが、調理でも給仕の仕事でもやりたいと意欲をもっています。

(石井)
ありがとうございました。そうですね、職業訓練は非常に重要な活動で、他団体もジュバのみならず色々なところでされています。ただ、職業訓練だけをやっていればよい、というものではありません。訓練生は、訓練を受けた後、実際に仕事を見つけて働き、経済的に自立をしていくことが大切なことです。ですから私たちも就職支援をするだけでなく、彼らが就職した後のフォローアップにも力を入れているのです。JCCPの現地のチームは、訓練生が就職したあとも適宜相談に乗るなどの支援を継続しています。

2014-01-01 01.54.14.jpg(中嶋)
一つ目のご質問についてですが、孤児に対して教育や職業訓練など総合的な支援をおこなっていくには、孤児院の運営ということも意義あるひとつの方策であると考えます。ただ、それを行うに際しては当然政府や他団体と連携するステップを踏んでいくことがまず必要であると思います。また、子どもの保護という観点からいえば、子どもの成育の過程において、子どもだけを集めてしまうより、やはりまずは別れてしまった親や親族を探す、そうでなければ里親をみつけて家庭の環境の中で育成することが望ましいということが国際標準になっています。その点で、例えば家庭に戻る前に子どもに対して行う啓発は大切でしょうし、またできれば保護者が見つかったあとも支援を続けていければよりよいのではないかと考えております。
「クイックインパクトプロジェクト」については、その内容をもう少し精査しながらその利用の可能性を探っていく必要があると考えています。

(浦上氏)
ひとつ私からのコメントとして付け加えるとしますと、南スーダンでの活動というのは、実際に現場に行ってみないとなかなか本当のところが伝わりにくい、ということがあると思います。南スーダンでは基本的な教育を受けていない人もまだ多く、それが人々の意識とか能力に影響を与えているように感じます。自衛隊のカウンターパートは州政府のインフラ省ですが、州政府の職員であってもなかなか時間を守ってくれない、約束を忘れてしまうなど、苦労も多いのです。またこちらの要求水準は決して高いわけではないと思うのですが、やはり質の面で求められる作業レベルに達していないなどの問題もあります。しかしカウンターパートにオーナーシップを持たせながら活動を進めていくのはとても重要なことであると認識しておりますので、様々な調整の場面や、一緒に業務をしていく場面などにおいて活動の難しさに直面することになります。何かを教えるといいましても、現地の人々のプライドは高いですし、支援を押しつけがましくなく、彼らが主導的にやっていけるようサポートすることの難しさを実感しているところです。

(石井)
そうですね。南スーダンで現地の人々と一緒に働くことがいかに大変か、非常にご苦労されたことと存じます。それはNGOにとっても同じで、中嶋も石原も毎日苦労しながら活動しているところです。
しかし今後南スーダンの情勢がもうすこし落ち着いて平和になれば、非常に美しい国ですので皆様にもぜひ一度訪れていただきたいところです。今は混乱が続いており、とても残念に思っています。
ところで、石原は、ジュバだけではなく、南スーダンの地方でも活動経験があり、ジョングレイ州には2年ほど滞在していました。私たちの職業訓練事業は現在ジュバのみで行っていますが、それはジュバには外国人も多く、ホテルやレストランも多く存在するため、求人の需要が多く見込めるからです。それでは南スーダンの地方では事情はどうなのか、私たちが行っている職業訓練事業は地方でも成立するのか、このあたりを石原に聞いてみようと思います。

(石原)
南スーダンは、10の州に分かれており、それぞれに州都があります。ただ、最低限のインフラがある、というのはほぼジュバだけだと思います。他の地域になると、州都であってもインフラは怪しいくらいです。それ以外となると8割から9割は何もない、いわば荒野です。まともな道路もなく、もちろん電気もない。水も川から汲んできて使うという世界です。学校にしても、小学校こそ村レベルで存在していますが、青空教室もまだまだたくさんあります。小学校を出て高等学校となると、なかなか通えるようなところにはありません。(南スーダンの小学校は8年間で、小学校の後は高等学校となります。)

そのようなところですと、地方の経済といっても、細々と小売りをしている店はあっても、商店というのもあまりなく、先進国の人が考えているようないわゆる経済活動というのはほぼありません。ということでホテルもレストランもほぼありません。ですから現状ではJCCPがやっている職業訓練はジュバ以外では難しいと思います。ただ、今後州都レベルの町が発展しジュバに追いついてくれば、ニーズが出てくるのではないかと思います。

(石井)
ありがとうございました。南スーダンの首都と地方の格差がいかに大きいかがおわかりいただけたかと思います。職業訓練事業は現在のところはジュバで行うのが適切であるということですね。ただ今後南スーダンの発展にともなって地方のインフラが整備されてくれば、職業訓練事業の可能性が地方においても出てくるだろうと思います。
それでは時間もおしてきましたので、ここで会場の皆様からもいくつかご質問をお受けしたいと思います。

全体2014-01-01 01.27.53.jpg(参加者①)
(中嶋へ)職業訓練を実施するにあたって、じっくりと時間をかけて訓練生の選考をおこなってきたと聞きました。このプロセスのなかで把握されたのではないかと思うが、ジュバという都市全体の中で、JCCPの職業訓練事業のニーズはどのくらいあると考えますか。またこれまでの修了生が300人近くという数字を挙げられたが、その数字が全体のニーズの中でどういう意味、インパクトをもつのか知りたいです。もう一点は、この職業訓練事業が、現地で「仕組み」として根付くよう努力されているのではないかと思いますが、そのあたりのことをもうすこし話してもらえるでしょうか。

(参加者②)
(中嶋へ)現段階ではまだ邦人がイニシアチブをとって活動されているように感じたが、事業の「現地化」についてどう考えるか。NGOの活動というのは、やはり現地の人たちが自分たちでやっていけるようにするのが本来の姿だと思うが、この「現地化」における困難と展望についてお聞きしたい。

(参加者③)
(中嶋へ)現在南スーダンでは中国の企業活動が大きいと聞いています。企業活動とNGOの草の根支援活動の住み分けについてどう考えますか。
(浦上氏へ)職業訓練を受けた人を、自衛隊にて一年間100人単位で大規模に雇用してはどうでしょうか。

(中嶋)
職業訓練のニーズはもちろん高いです。厳しい状況に置かれている若者はたくさんいますし、また南スーダンの人口構成は日本と逆で若年層がとても多い社会です。そして国民の半数程度が貧困層といわれており(世界銀行の基準で、一日1.25ドル以下で生活する人)、多くの若者が定期的に収入を得られていません。これは、十分な栄養の摂取ができないとか、十分な医療や教育が受けられないなど、いろいろな面に影響します。そういった点でこの事業のニーズはとても高いです。その中で私たちの活動の貢献度は些細なものですが、私たちはできるだけ長くこの事業を続けたいと思っております。

一方、「現地化」や「仕組み」についてですが、もちろん私たちが事業を丸抱えでずっとやっていては意味がありません。これでは単なるチャリティーになってしまいます。私たちはたとえば、現地NGOから職員に出向してもらい、訓練のノウハウを学んでもらっています。また、現地関係者にノウハウを共有するため、訓練マニュアルを整備しようとしています。そして現地で労働省と国連、NGOでワーキンググループが形成されたのですが、これに積極的に参画し、その中でノウハウを伝えていき、ゆくゆくは現地の人々によって職業訓練が実施されるという仕組みが作られることを支援していきたいと思います。

企業との連携についてですが、もちろんレストランやホテルに訓練生の就職をあっせんしていくのも一つの連携です。今後企業の社会的責任(CSR)など、さまざまなかたちで協働できればよいと考えています。南スーダンでは、残念ながらまだ模索中の段階で、現状として企業とNGOが連携をしている状況にはないと言えます。また中国については、確かに影響力は相当あると思います。ただNGOと足並みをそろえて連携して支援しているという状況とは言えません。

(石井)
JCCPとして現地で企業と協働しているという状況では今のところございません。ただ例えば日本では南スーダン職業訓練キャンペーンの実施に対して寄付を募っており、ご協力もいただいているところです。

(浦上氏)
訓練生100名くらいを自衛隊で雇用できないか、ということですが、確かにそれができれば雇用創出に寄与できますし素晴らしいと思います。しかし日本隊のみならず各部隊は、国連の部隊ということでもあり、国連の現地職員として現地の人を雇用しないといけないことになっています。従って何の基準もなく100名そのまま雇用するというのは困難であろうと考えます。公募として多いのは、宿営地での給仕、通訳などがあります。また事務職では、やはりパソコンが使えることや事務整理作業ができるなどのスキルが求められます。あるいは自動車の整備ですとか電気工事、建設などの専門的スキルを持っているとローカルスタッフとして雇用につなげていきやすいと言えると思います。

(石井)
ありがとうございました。
そろそろ時間となりましたのでこのへんでパネルディスカッションを終了させていただきます。このほかのご質問につきましては、後日ホームページにて回答させていただきたいと思います。
本日は誠にありがとうございました。